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三水会2014年7月講演録:藤澤秀一さん

■講演テーマ:「進化する放送」
■講 師 藤澤秀一(ふじさわしゅういち)さん(‘79年電気電子工学科卒)(財)元NHK放送技術研究所所長
■日 時 2014年7月16日(水) 18:30~20:30 
■場 所 ソフィアンズクラブ  
■参加者:30名

1_藤澤氏正面RIMG4518
〈藤澤秀一プロフィール〉
1980年NHK東京営業局営業技術部入局。その後種々の放送技術の研究・開発に関わり、95年放送技術局報道技術センター・チーフエンジニア、05年放送技術研究所研究企画部部長、06年経営企画室デジタル放送推進統括担当部長を歴任後、12年NHK放送技術研究所所長就任。本年6月退任。(財)NHKエンジニアリングシステム研究主幹、総務省情報通信審議会専門委員

「4K、8K」って最近よく聞くけど何???という方はぜひ!

司会口上(佐藤光利さん三水会幹事)「日本のいや世界のテレビ放送技術を牽引するといっても過言ではないNHK放送技術研究所の所長を6月まで務められ、まさにSHV(スーパーハイビジョン)技術開発を引っ張ってこられた藤澤さんに、今、話題の「4K/8K」放送やスマートテレビ、ハイブリッドキャストなど、これからさらに進化していく放送について初心者向けにお話しいただきます」

7月の三水会は、マスコミ・放送業界の最前線で活躍されている方が多く、会場は講演開始前からいやが上にも期待が高まっていた。そして藤澤さんの講演は、NHK技術研究所の紹介からテレビの技術的発展について、実際の映像や動画も使いながら話をされた。

2_オープニング20140716三水会RIMG4525


▼『シンボリックな事件』だったデジタル放送への移行

最初に、藤澤さんは地上のテレビアナログ放送がデジタル放送へ切り替わる時、自宅で録画されたビデオを紹介された。それは、「アナログテレビ放送を長い間ご覧いただきましてありがとうございました」というアナウンサーの言葉で締めくくられる事務的な案内放送だった。藤澤さんは、1997年NHK技術局に転勤になり、翌年からBSデジタル放送の立ち上げプロジェクトに参画し、放送のデジタル化一筋にNHKでのキャリアを積んで来られた。このデジタル放送への切り替えは、ご自身にとって『シンボリックな事件』だったそうで、「あえて録画を紹介させていただきました」と語られた。2000年は、日本にとって本格的なデジタル放送が開始された記念すべき年だった。

▼日本のテレビ中継研究は1940年の「幻の東京オリンピック」に始まった

次に日本のテレビ放送技術史についてNHKの技術研究所の歴史とともに解説された。日本のテレビ放送は、戦争で中止に追い込まれた1940年の「幻の東京オリンピック」をテレビ中継するために研究が開始された。1925年に日本で初めてラジオ放送が開始され1930年にはNHKの放送研究所が設立されたという。そして世田谷の砧にあるNHK放送技術研究所の建物や、現在の藤澤さんの職場の紹介もされた。

資料1
資料:NHK放送研究所1930年設立時の建物(1930-1961)※クリックで拡大

資料2
資料:NHK放送技術研究所(1961-2002)※クリックで拡大

IMG_8765.jpg
おまけ:ちなみに現在は・・・※筆者撮影

我が国の衛星放送は、2000年までの間は、NHKとWOWOWのみでBSアナログ放送が行われていたが、我が国の本格的基幹放送としてスタートしたのは、2000年からのBSデジタル放送とのこと。

資料3
資料:わが国の放送サービスの歴史(放送のデジタル化まで)※クリックで拡大

日本の衛星放送の特徴は一般家庭でパラボラアンテナを設置して衛星からの電波を直接受信するもので、1984年に世界で初めてアナログ方式で開始され、2000年以降のデジタル方式も含めて通算25年以上経過した2011年、IEEEアイトリプルイー (The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc)のマイルストーンとして認定されたそうだ。そして藤澤さんは、放送サービスの資料を解説されながら、「新しい技術が発見されても、実用化までは時間がかかることが多い」と強調された。例えば、1964年からハイビジョンの開発が開始され、実用化までには、数十年を要している。

▼デジタル化により急速に進むメディアの進化

さらに藤澤さんは、「デジタル化によってテレビ放送等メディア進化の速度が急に早くなった」と資料「テレビ放送メディア発展の系譜」を見ながら、具体的に説明された。

資料4
資料:テレビ放送メディア発展の系譜※クリックで拡大

グラフのデータは、横軸が高品質化、縦軸が高機能化である。例えば、テレビのカラー化は、高機能化ではなく高品質化なのでグラフは水平に遷移している。逆に、ハイブリッドキャスト(放送通信連携高機能化サービス)は、品質というより機能が増えただけなので、垂直方向にグラフが伸びる形で示されている。それに対して2000年の放送デジタル化や4K/8Kは、品質、機能ともによくなったので、斜め上に伸びている。

▼ネットとテレビ放送の連携サービスを目指す「ハイブリッドキャスト(放送通信連携高機能化サービス)」

次にハイブリッドキャストの説明が行われた。なぜこのようなサービスが必要なのだろうか。

「ハイブリッドキャスト(放送通信連携高機能化サービス)」を計画するにあたり、テレビ放送60周年の際に,テレビ放送界研究所でテレビと一般生活者の関わりについて行われたアンケート結果が示された。

資料5
資料:アンケート結果 タイムシフト視聴・オンデマンド視聴※クリックで拡大

資料6
資料:アンケート結果 ソーシャル視聴※クリックで拡大

Q:ふだん、録画した番組をどれくらい見る?
A:「週に1日以上」録画したテレビ番組を見る人は、全体の4割という回答で、藤澤さん解説:「『要するにリアルタイムの番組はご覧にならない』ということは、民放の皆様には脅威になるかと思いますが」(会場笑)

Q:インターネットで「テレビ番組に関する動画」を見る?
A:全体の約3割。男30代以下と女16~29歳では半数以上が動画をネットで視聴という回答で、藤澤さん解説:インターネットの情報量の8割は動画といわれているが、この結果はそのことを表していると思います。

Q:SNSでテレビに関する情報や感想を読み書きする?
A: 全体の22%。30代以下で利用する人が多い。 という回答で、若い世代はテレビを見ながら、何等かのツィッター等をしていることが表されている。

Q:テレビをひとりで見る?家族と見る?
A: 個人視聴の増加傾向、家族視聴の減少傾向が止まっている現象が示されたが、藤澤さんは、「このデータは検証をする必要がありますが、1970年からテレビを一人で見る人が増加してきたが、1990年代ごろからは一旦飽和状態になり、2011年の東北大震災以降家族とテレビを見る傾向に戻っているようです」と補足された。

以上のようなアンケート結果から、放送局は、一方的に番組を提供するだけでなく、視聴者のニーズに合わせて、放送サービス自体を変えるべきではないかという観点で「ハイブリッドキャスト(放送通信連携高機能化サービス)」の研究開発が始められたそうだ。

「ハイブリットキャストとは、放送番組と連携させて、いろいろな高機能サービスをネット経由で提供するという発想で作られたもので、テレビとスマホと両方の機能をさらに進化させ、ネットと連携させているものです」と説明され、ハイブリッドキャストの紹介ビデオでその機能の一部が紹介された。

資料7
資料:NHK ハイブリッドキャストとは?※クリックで拡大

ハイブリッドキャストの機能は、テレビ番組の放送中に、関連する番組が紹介されたり(関連動画、関連コンテンツ)、サッカーの中継中に、メンバー紹介の情報を得たり、好きな選手のゴールだけリプレイで見たり等、ネット経由のサービスでさらに視聴者に番組を楽しんでもらうためのもので、いわゆるPCプログラムを作るのと同じように、さまざまなアイディアで現在開発されているそうだ。「ソチオリンピックの際、ハイブリッドの高機能サービスを試験的に行ったが、一番人気があったのは、『時差再生』で、番組途中から、見ている番組をクリックするだけで最初から視聴できるというものでした」と。ハイブリッドキャストは、まだプリミティブなサービス段階であり、「マルチビュー」という機能等、相当予算がかかるのですぐに実現するのには、時間がもう少しかかるとも補足された。

資料8
資料:NHK Hybridcast サービスソチ五輪に向けて認可申請したハイブリッドサービス※クリックで拡大

▼2020年東京オリンピックを目指すスーパーハイビジョン(4K/8K)の開発

最後に、スーパーハイビジョンのロードマップという資料を見ながら、2016年のリオのオリンピックに試験放送が行われ、2020年東京オリンピックまでには、8K スーパーハイビジョン放送開始をめざしているという今後の計画を話された、そして、4K/8Kを中心に最新技術(立体テレビ、超高速度カメラ、音声認識による字幕制作等)について、ビデオや資料も織り交ぜながら解説が行われた。歴史的にも放送技術の進歩は、オリンピックをテコに急速に進歩しているという。藤澤さんは、戦前の「幻のオリンピック・東京オリンピック」当時の機材と現在のものとを示され比較されたが、その放送技術の進歩を会場の参加者は目の当りにした。

資料9
資料:幻の東京オリンピック※クリックで拡大

資料10
資料:総務省 放送サービスの高度化に関する検討会8Kロードマップ※クリックで拡大

「テレビではない未来のテレビがスーパーハイビジョン(SHV)」だそうだが、最近では、ブラジルWWFのサッカーや幕張の「宇宙博」でその紹介が行われたそうだ。

現在のハイビジョンの4倍きめ細かいものが4K画質で、さらに16倍の超高精細映像と、22.2チャンネルのマルチ音響によるサービスが8Kスーパーハイビジョン(SHV)である。

資料11
資料:スーパーハイビジョンとは※クリックで拡大

資料12
資料:スーパーハイビジョンとは 説明4K/8K※クリックで拡大

8Kによる画面の実物感・臨場感は、すばらしく高度で、スポーツの試合会場内にいるような興奮が、直に伝わってくる。高解像度、大画面、近視距離、広視野角によって、実物感や空気感まで伝わってくるようになるそうだ。8Kは、自宅のみならず、パブリックビューイングやデジタルミュージアムにも活用が可能である。ただし、現実的には一般の個人宅には8K 用の大画面ディスプレイをおくことは難しい。量産化や国際基準にあうように標準化をすることも、予算面技術面も含め、大きな課題があるようだ。

資料13
資料:8Kにおける実物感と臨場感※クリックで拡大

▼4K/8K技術で息を吹きかえしてほしい日本のメーカー

放送技術は進歩し続けているが、デジタル化によって、その速度は急激に早くなった。コンピューターの技術革新も同じように進んでいくが、放送のデジタル化によって、当初予想されていなかったことが2つあるそうだ。

一つは、デジタル化によって、テレビがプラモデル化しその結果、安価になったことだ。「アナログ時代は、日本の匠の存在がありましたが、デジタル化で、テレビはだれでも作れるプラモデルのようになり、その結果、海外でだれでも安く製造できるようになり製造の環境が大きく変化したことは、本当に予想しなかったことです」と語られた。

二つ目は、「さらに高度な技術を日本が先頭にたって牽引していくことによって日本のメーカーも息を吹きかえしてほしい。また、4K/8Kの技術を成功させたい」と抱負も語られた。

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会場からは、BS放送に従事している佐藤幹事も「8Kの画像をパブリックビュー等でぜひご覧になっていただきたい」と最後にコメントされた。

質問コーナーでは、今後のテレビの世界戦略や韓国の戦略、国際競争、標準化の問題等、さまざまな意見交換が行われた。藤澤さんの理工学部時代の思い出は、「基礎的な勉強を野村卓也先生(に教えていただき、13年間にわたるNHKの研究所時代の経験が今本当に役に立っている。98年ぐらいからテレビのデジタル化に取り組むようになったときに、自分はアナログ時代の人間だったので、世界が大きく変わったことを一方では認識した」とも語られた。

▼感想

テレビの放送技術で世界を牽引しているNHK放送技術研究所で卒業生が活躍されていることを実感した。放送業界の上智卒業生の活躍は、ともすればアナウンサー等ソフト面に着目しがちだが、裏方の技術分野の方でも多くの卒業生が活躍されていることを改めて認識した。新しいテレビの4K/8Kを始め、NHKがPRしている技術サービスにも注目し今後の藤澤さんのご活躍をお祈りしたい。(報告‘77年外独卒 山田洋子)

5_懇親会20140716三水会RIMG4765
懇親会の様子
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  • Date : 2014-11-08 (Sat)
  • Category : 三水会
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