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三水会3月講演会「本屋大賞と21世紀の出版業界を語る」嶋浩一郎氏

■講演テーマ:「本屋大賞と21世紀の出版業界を語る」
■講師:嶋 浩一郎(しま こういちろう)さん('93年法法)
     博報堂ケトル代表取締役社長
     本屋大賞実行員会理事、雑誌「ケトル」編集長
■日時:2013年3月19日(火)18時30分~21時
■場所:ソフィアンズクラブにて
■参加者数:30名

写真②正面RIMG44672
嶋浩一郎氏

▼自己紹介

今回の講演で嶋さんは、「なぜ自分が出版業にかかわるようになったのか?」を、広告・出版業界の現状・問題点と併せて熱弁くださった。冒頭は「学籍番号88-3747の嶋 浩一郎です」という1行の挨拶から、彼の所属する株式会社博報堂ケトルの説明から話は始まった。(株式会社博報堂ケトル:http://www.kettle.co.jp/about/index.html)

「博報堂ケトルは、博報堂内のいわば特殊部隊で、クライアントの課題解決はなんでもやるというコンセプトのもとに、7年前に設立されました。自分はいわゆる広告のクリエイティブ・ディレクター、つまり広告を作る監督のような仕事をしつつ、雑誌編集長も務め、下北沢に本屋も開業するほど、出版業界には、なみなみならぬ思い入れがあります。ところで、ここには出版業界の方いらっしゃいますか?」(K書店のM先輩が挙手され、会場・笑い)

「私はあるときはテレビコマーシャルを作り、イベントをやり、デジタルコンテンツを作り、雑誌を作り、本屋をやっているわけで、『やっていることが節操無い』と言われそうです。我々はクライアントの課題解決のために最も効果的なコミュニケーションを設計しようとするので、そのアウトプットは多岐にわたるのです」と仕事の事例を早口で紹介された。(詳細HP参照: http://www.kettle.co.jp/works/index.html)

▼重要視される「体験をデザインするスキル」―デジタル化によるコミュニケーションの変化

「かつて、広告代理店は新聞広告とテレビコマーシャルを作るのが仕事でした。でも現在、メッセージを伝えるチャネルは数えきれません。ケータイ、iPadなどのタブレッド、キンドルなどの読書端末、WiiやPSPなどのゲーム機、もちろん家にはテレビやラジオがあるし、電車に乗れば中づり広告があって、駅にはデジタルサイネージがある。街頭には屋外広告が・・・そういう情報に囲まれて僕らは生きているわけです(息切れ)・・・。

デジタル化によって、企業の伝達チャネルはいっきに広がりました。クリエイティブ・ディレクターの仕事は、どのタイミングで、どのメディアを使って、誰に何のメッセージを伝えていくかというシナリオを作る編集者のような仕事に変わってきたわけです。

新聞広告やテレビコマーシャルは人々にメッセージを伝えたわけですが、今はたとえば「続きはWEBで」と伝えることでWEBに人々を誘引できます。そこで、人々は動画を見ることもできるし、SNSに参加して他の人々と会話も楽しめる。今までになかったコミュニケーションが可能になったわけです。そこでは従来の『伝達するスキル』より、『体験をデザインするスキル』の方が重要視されます。博報堂はそんな変化に対応するためにケトルのような小型のブティックをつくったわけです」と嶋さんは語った。

そして「本屋大賞」の企画も含め、嶋さんが課題解決のために守っている3つのエッセンスも紹介された。この3つのエッセンスどのような業務にも応用できそうだ。

1)「ニュートラル」に発想する 
- 過去の成功体験を切り捨て、本当にクライアントに、有効な手段は何であるかをよく見極めること。高額のテレビコマーシャルや流行の手法が常に有効であるとは限らないので、柔軟に新しい発想をする。

2)「マクガイバー*」を勝手に顧問にしています(*80年代米国TVドラマ主人公) 
- 仕事は、眼前にある材料を有効活用していかに最高の結果をだすかという納期と予算との戦いでもある。極限状況の問題解決のロールモデルとして「冒険野郎マクガイバー」のテレビシリーズや映画「アポロ13」も参考にするという(http://www.phoenix-foundation.jp/macgyver.htm)

3)全部いっぺんにやる
- 従来型の広告代理店の部門別の分業体制ではなく、ケトルは皆で、意見を出し合い、少人数で対応し、有効な「コアアイディア」を提案するようにしている。



写真⑤プレゼンの様子 従来方の広告代理店組織RIMG44493
写真⑤ 従来型 <分業形式で既存手法の枠の中で発想してしまいがちでした。>

写真⑥ケトル組織について情熱的に語る嶋氏RIMG44497
写真⑥ ケトル式 手口はニュートラル、表現 X タッチポイントの提案・実施

そして、有効な「コアアイディア」の広告事例として、アメリカGOOGLE社の理数系のスーパーブレインズをねらった駅貼りの人事広告について説明された。その広告にはキャッチコピーもなく、数式の問題自体がHPにもなっているので、アクセスし、問題を解いていくと採用通知が出てくるという。

その数式問題は「First 10 digit prime found in consecutive digits of e.com(自然対数の底eの中から最初に連続する10桁の素数)」(試したい方はどうぞ)

▼逆転の発想が「本屋大賞」賞を作り本屋さんの問題解決

本が好きでたまらないという嶋さんの書店の現場への熱意と「欲望や文句(欲望の裏返し)はビジネスチャンス」という「広告屋」の逆転の発想が相乗的に働いた結果、「本屋大賞」の企画は始まった。

本屋大賞は現場の書店員たちが、本の雑誌社や嶋さんと立ち上げた企画だが、本が好きでたまらないという嶋さんの書店の現場への情熱と広告会社の視点や考え方が本屋大賞の企画に活かされている。

▼「魚屋さんの話をさせてください」

本の販売流通システムの抱える問題を魚屋さんと比較しながら、ご自身の書店を回られた体験も語られた。本の販売流通システムを魚屋と比較しながらご自身が現場をまわった体験も語られた。
「魚屋さんは自分で魚の仕入れ値も売値も自己責任で決めますが、書籍の場合、再販制度で価格が固定化されていたり、委託販売の制度があったり、まったく違う世界なんです。

たとえば地方の書店が売りたい本があっても返品リスクがあるためにその本が配本されるとは限らない。それでは、書店もつまらなくなってしまう。地域の人にいい本を紹介していくべきなのに。

自分も博報堂の「広告」の編集長をしていた時、ポスターを貼ってもらいに首都圏の書店をまわっていました。現場まわりをしていた時、書店員の人の話を聞くとみんな『直木賞は自分ならこの作家にするのになあ』と不満をいうのです。」

嶋さんは「不満=欲望の裏返し」ととらえ、そこにビジネスチャンスがあるという。出版業界自体、90年代から右肩下がりの状況だったが、そこに風穴があけられないか書店員と考えた。そこから、全国の書店員の投票によって選ばれる「本屋大賞」が生まれた。

▼「ベストセラーを生み出す仕掛けはどうやって生まれたのか」

写真⑩プレゼンの様子 ベストセラーを生み出す仕掛けRIMG44512


一次投票で10作を選び、その10冊をさらに読み返し、二次投票が行われるが、一次投票と二次投票でかなり順位が入れ替わるそうだ。映画化作品も続々生まれて、書店員が自分たちでベストセラーを生み出そうという現場のモチベーションも上がっている。

2004年の第一回受賞作「博士の愛した数式」に始まり、今年4月に第10回受賞作が発表されるにいたった。第一回目は資金もなく、表彰賞品は全国の書店員が持ち寄った手書きのPOPが贈られたという本当の手作りの発表会だった。

3年目にNPO法人「本屋大賞実行委員会」が設立され、嶋さんは現在NPOの理事を務めている。4月の授賞式が終わると同NPOのWEBに全国の書店から店頭フェアの状況を伝える写真が送られてくる瞬間がとてもうれしいと語った。

注記)2013年4月9日に今年度「本屋大賞」『海賊とよばれた男』百田尚樹著が発表されたので注目いただきたい。
(HP:http://www.hontai.or.jp/)

嶋さんは、企画のプロとして「企画の本質は、世の中の暗黙知を言語化すること」だという。つまり、本人たちも気付いていない、まだ言語化されていない欲望を形にしてあげることだという。「人間は自分の欲望を10%も言語化できないそうなのです」という。

本屋大賞の場合、「自分なら、別の本を直木賞に選びたい」という欲望の受け皿を具体化したといえるだろう。

▼リアル本屋にこだわる

嶋さんは、2012年7月下北沢にビール片手に本を楽しめる「本屋B&B(Book & Beer)」を開店した。(http://bookandbeer.com/)amazonが躍進し、電子書籍が普及する時代に、大手グループに属さない新規開店は都内では4年ぶりのことらしい。

「本屋の棚はAKB48のように何をセンターにもっていくかで決まります。毎朝、日本人は今日何に興味を持つかを考え、その話題に関わる本をセンターに置き、夕方、売れているとビンゴ!やった!と思います」と語る。嶋さんは、とにかく本屋が大好きで楽しくてたまらないという様子だ。嶋さんが、「リアル本屋」にこだわる理由も、企画担当の視点であるという。

店内を歩き回り、「買うつもりはなかったけれど、ほしかった本」に出会うこと

=(すなわち)「偶然の出会い」を本屋で見つけること⇒(つまり)自分の「暗黙知の欲望」を言語化してくれるのが、「リアル本屋」の楽しみの極意であるという。

本屋の経営は、現実なかなか厳しいらしい。嶋さんは毎日売り場でイベントを開催し、ニュートラルな発想で、今度は新しい「リアル本屋」のビジネスモデルを成功させたいと日々奔走しておられる様子だ。

最後の質問コ―ナーでは、本屋大賞の投票の方法、嶋さんの好きな本・映画、学生時代猪口教授の影響で中東問題を研究するためヘブライ大学に留学し、「多様性」を実感されたことや、本のタイトルの大切さ、統計データになっていないものから新しい欲望を見つけることのほうが大切だと思う等々話題のつきない三水会だった。

写真⑯懇親会RIMG44677
懇親会での様子

▼感想

三水会の後、代々木駅で「本屋大賞」の駅貼りポスターを改めて見直した。そして、4月9日、テレビのニュースで第10回本屋大賞を受賞された作家の百田尚樹氏が、「文芸の世界の中で、一番読者に近い方が選んだ賞なので、別格の賞です」と、語っている姿をみて、出版業界に新風を巻き起こし、自然体で、「本」の企画を追求し続けている嶋さんの姿に感銘を受けた。

写真⑰代々木駅 駅貼り広告RIMG44796
代々木駅ホームの本屋大賞の広告

ネット社会であるが、リアルな体験が人間の欲望の基本で、そこから新しいビジネスや事象が創出される余地は、ニュートラルに工夫すれば、いくらでもあるのかなと思った。下北沢の「本屋B&B」にぜひ伺ってみたいと思った。
(報告 '77外独 山田洋子)
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  • Date : 2013-04-30 (Tue)
  • Category : 三水会
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