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【特別講演会】いま日本が理解すべきオープンソースムーブメントとは ~ LPI-Japan理事長・成井弦氏

テーマ:「いま日本が理解すべきオープンソースムーブメントとは」
日時 :2011年9月8日 18時30分~21時(四ツ谷・ソフィアンズクラブ)
講演者:Linux Professional Institute Japan(LPI-Japan)理事長・成井弦氏
参加者:31名


■いま日本が理解すべきオープンソースムーブメントとは

9月8日(木)、マスコミソフィア会9月講演会が四ツ谷ソフィアンズクラブにて開催されました。今回の講演者は、長年IT業界で人材育成に携わり、約10年前から、世界で利用されているリナックスOSの技術者を養成するLinux Professional Institute Japan(LPI-Japan)の理事長を務めておられる成井弦氏。

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(写真:成井氏)

いまなぜ、リナックスOSのような「オープンソース」=「技術情報など、今までは秘密にした方がメリットが有った情報などのオープン化」が日本にとって重要なのか。世界的なオープンソースムーブメントに、日本はどう乗り切ってゆくべきかについて、余す所なく講演いただきました。

講演の内容をダイジェストでご紹介します。

■インターネットはどのように始まったか・・・

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(写真:講演会の模様)

成井氏が最初に取り上げたことは、インターネットの成り立ちについてでした。

およそ今から40年前の1969年、アメリカの国防省が、旧ソ連などの諸外国から攻撃を受けても、瞬時に迂回路を探せる安全なネットワークを構築します。ここで開発されたすべてのネット技術について、国防省は知的所有権を持たず、世界に向けて「オープン化」しました。このネットワークがその後、現在のインターネットに発展し、他国も同じ規格でネットワークを構築できたため、全世界が共通のインターネットでつながる結果となりました。成井氏は、逆に、米国がオープン化しなかった場合、世界各国の規格が別々になり、現在のようなインターネットは存続しなかった事を強調されました。

アナログテレビ放送の通信規格(NTSCやPAL)なども例に挙げ、オープン化することがいかに世界社会に大きな貢献をすると同時に利益をもたらしているかを訴えられました。

そして話は、オープンソースのシンボルともいえる「Linux(リナックス)OS」へ。1980年代、企業コンピュータの一般的なオペレーティングシステムだったUNIX(ユニックス)と同等の使用環境を提供できるように、フィンランドのヘルシンキ大学在学中だったリーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)氏が、1991年、開発したのが「Linux(リナックス)OS」でした。調べによれば、当時商用UNIXは高価であり、UNIXを模したオープンなOSも未開発の段階だったため、トーバルズ氏がオープンな環境で公開したことで、一気にLinuxに注目が集まり、様々な企業や大学がLinuxの開発の手助けをすることになったそうです。成井氏は、オープン化したことで多くの技術者がLinuxを更によくする事に参加し、そして良くなったLinuxが再配布されるというITエコロジー(改善→配布→改善)にもなったと語っています。

■オープンソースが持つ貢献競争の原理

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(写真:Linuxの適用範囲とスケーラビリティ)※クリックで拡大

現在LinuxOSが採用されている分野は、デジカメのような組み込みOSからスマートフォン、企業用サーバー、果てはいわゆるスーパーコンピュータに至るまで、幅広いスケーラビリティを持つシステムに成長しているということです。成井氏は、これは、オープンソースをより使いやすく、様々な用途に使えるようにし、そのことで便利な世の中を築いてゆく、そういった社会貢献に関わりたいという開発者の「貢献競争の原理」で成り立っている世界なのだと言います。ここで言う、貢献の競争とは大勢の技術者から無料で提供されるソフトの中で一番良いソフトのみが使用され、使用されたソフトの開発者には名誉も含めて多くのリワードがあるが故に貢献の競争原理が働くとの事でした。

■「Fee On Free」で利益を上げる方法

次に、オープンソースムーブメントから派生したビジネスモデルとしてのFee On Freeに付いて成井氏はマイケルサンデル氏の「ハーバード白熱教室」を取り上げました。サンデル氏の「政治哲学」の講義は、Appleが運営する「iTunes U」という、世界約800の大学が各々の講義を公開しているサービスで無料で見ることが出来ます。公開する側の大学やサンデル氏からすると、お金のかかった貴重な講義を流す上、配信設備などの費用まで自前で持っているにも拘らず、なぜ無料で公開が出来るのか?

つまり、iTunes Uで配信されるコースはすべてダウンロード(DL)の数でランク付けがされます。サンデル氏の講義は、長期に渡りDL数で上位に位置していました。
要するに貢献の競争の世界に於いてサンデル氏は上位にいた訳です。それ故にNHKが興味を持ち、「ハーバード白熱教室」として放映され、DVD化され、東大にサンデル氏を招きその模様を放送するなど、一大マイケルサンデルブームを作り出しました。これらの放映は当然の事ながらハーバード大及びマイケルサンデル氏に放映料が払われて実現しました。

大学としても教授にしても良いコースを無料で世界に配信することにより、結果として有料のビジネスに結びつきます。また大学も教授も名誉が上がります。
またApple社も無料で優れたコースを配信することにより、iPod、iPhone、iPadが大量に売れます。これがFee On Freeの良い例だとの説明がありました。

またグローバルで勝つためには、「貢献競争」に勝つつもりがなければ、そもそも、世界に出ることすらできていないのだと・・・。

■バザール方式と伽羅方式

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(写真:講演会の模様)

成井氏は、オープンソースの価値観は「バザール方式」が前提となっていると言います。ウィキペディアによれば、バザール方式とは、「複数の参加者により創造活動が行われる場合の手法の一つであり、参加者を限定せずに参加者の独自性を尊重し階層的な組織ではなく個人が中心となったルールや命令系統の少ない方法で進める手法であり、伽藍(がらん)方式に対比される方法である」・・と書かれています。

つまりオープンソースの発展は、各々の開発者の「独自性や自主性」に懸かっているということなのです。しかしながら、現代の日本の各企業を見回すと、「伽藍方式」を採用している企業の多いこと。言われたことをきっちり実行することが企業の発展につながるという考え方が主流なのです。しかし、その考え方も、グローバル化の波が押し寄せる昨今、変化が起きていると言います。

■グローバル化のための人材育成とは

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(写真:成井氏)

世界中で日に日に強くなる「貢献での競争」に勝つためには、技術者たりとも、「独自性や自主性」を重んじ、「バザール方式」の行動形態を身に付けた人材育成が急務であると、成井氏は語ります。成井氏が現在理事長を務める「Linux Professional Institute Japan(LPI-Japan)」は、世界に出てもやってゆける、そんな技術者の育成を技術者の認定活動を通じで行なっていると感じました。

3月11日の東日本大震災による原発事故などで、いま注目を集める自然エネルギーや、それら電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網「スマートグリッド」の実現化。ここにもオープンソースムーブメントの考え方が大きな貢献をすると言います。

世界で起きているオープンソースムーブメントを理解すること、これが、これからの日本社会の未来を築き上げる礎になることは間違いないでしょう。そのためにも、もっとマスコミでこのオープンソースムーブメントについて取り上げられるよう、我々も更なる努力をしなければならないと感じた講演会でした。
(取材・文:土屋夏彦 '80理電)

(リンク)
LPI-J
http://www.lpi.or.jp/
Linux
http://ja.wikipedia.org/wiki/Linux
iTunes U
http://www.apple.com/jp/education/itunes-u/
バザール方式
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%AB%E6%96%B9%E5%BC%8F
スマートグリッド
http://www.kankyo-business.jp/topix/smartgrid_01.html
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