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東日本大震災からみえてきたこと ~

「東日本大震災からみえてきたこと」 

 ~灯りの陰影で生まれる新しい街の発想・震災で出現した“シェアードスペース(Shared Space)”~

山田洋子('77外独)



□今回の地震と津波に原発事故が重なった東日本大震災は、私たちが長い間、築き上げてきた生活の仕方、思考の方向、文化の在り方などの価値観をくつがえし、改めてすべてを根底から問い直す大きなきっかけを与えてくれたような気がしています。

□私は、「公共の色彩を考える会」という「色彩」を切り口に街の景観の向上を目指す市民団体で活動をしています。昨年、会のフオーラムで従来の「安心・安全」のための「近代化」と称する価値観に対して発想の転換を訴えた2人の先生の講演を思い出しました。当時は現在の状況は予想されていませんでしたが、今回の震災は、改めて灯りと街の景観、さらには、市民の公共性マナーを考えるよい機会を与えてくれたように思います。

▼これまでが明る過ぎたのではないか

□震災後、私たちの街の店や駅などは、節電のため暗くされ、明るさに慣れ切った私たちは当初は違和感がありました。しかし慣れてくるにつれて、多少暗くても不便さを感じないだけでなく、これまでが明る過ぎたのではないかとさえ思うようになりました。

□欧米の街では、現在のような暗さが普通だという話も聞きます。4月19日の日経新聞夕刊の生活欄には、欧米の地下鉄駅は50ルクス程度なのに、東京の地下鉄駅は80ルクスから場所によっては10倍の500ルクス程度もあるという記事が載っていました。

地下通路
(壁のウィンドウディスプレイが消灯している日本橋地下通路)

□先日、私は日本橋のデパートを目指して、いつもより暗い地下通路を歩きましたが、暗い通路の奥から老舗デパートの暖簾越しに、ちらちらと輝く売り場の光がもれているのを見たとき、なんとも言えない安らぎを感じました。それは、これまでの白く照らされた通路からは見たことのない光景でした。暗くなることによって、明かり陰影によって生まれる新しい発見もあると思いました。

デパート
(日本橋地下通路のデパート入口 明るい売り場の光が暖簾を通して漏れている)

▼明るすぎる街路灯で沈む景観

□日本では「明るい」ことが「安全で近代的」と考えられ、夜は、昼間のように街路灯が道をこうこうと照らすというのが当たり前となっています。しかし街路灯だけが明るすぎるために周囲の景観が沈んでしまい、その周りの街並みや人の生活の気配が感じられにくいのです。こうした明るいことへの疑問を問題提起した東京都市大学の小林茂雄教授の講演を私は思い出しています。

□小林教授は、安全確保のために明るく設置されている街路燈は、歩くためならもっと暗くてもよいし、明るいと暗いものはより見えにくくなる。人影が判断できる程度に街路灯を暗くすると、逆に建物内部の光が透過して外に漏れ出す、つまり、家の内部の光によって、夜の街並みが浮き上がってくると説いています。そして富山市八尾町、五箇山相倉合掌集落、白川村、横浜山手西洋館等で実験的な取り組みをしています。(参考:小林教授URL http://kobayashilab.net/ )公共性という意味では、個人住宅の玄関灯などが街の安全にも寄与しているという意識を住民が持つことも大切です。
参考情報:5月22日(日)TV東京18時30分~19時「放送予定の番組トコトンハテナ」「震災後 街の明かりはどう変わったの?(仮題)」http://www.tv-tokyo.co.jp/tokoton/ に東京都市大学小林茂雄教授は出演なさるとのことです。 せひ、ごらんください。

▼ヨーロッパでは標識のない道路が

□今回の震災では、停電したため交通信号機が使えなくなり、歩行者、自転車、車が交差点などの空間を共有するという非常事態が発生しました。信号が点滅していないから危険であるといった報道がされましたが、車、自転車、歩行者、一人ひとりが注意をして、お互いに安全に道路を利用し合ったというのが現実です。

□日本ではあまり話題になっていませんが、筑波大学副学長西川潔教授の講演によると、実はヨーロッパでは「シェアードスペース(SHARED SPACE)」という運動が始まっています。街から、道路標識をとり除き、歩行者、自転車、車の3者が同じ道路、スペースを共有する、シェアするという新しい考え方です。専門的には、「心理的交通鎮静化」と呼ばれています。

ロゴマーク
(筑波大学西川教授資料:ロゴマークに「シェアードスペース」の概念は表わされています。)

オランダ新聞
(筑波大学西川教授資料:オランダのドラハテンという街で、道路標識を抜いて捨てようとしているところ(現地の新聞))

▼即席のシェアードスペースが日本でも

□シェアードスペースの地域を車が走る時は、歩行者とアイコンタクトが出来る程度の時速30Km以下に減速し、歩行者、自転車とコミュニケーションをとりながら、走ります。自転車、歩行者も同じです。つまり道路利用者が標識や信号等の規制を頼って行動するのではなく、相互のコミュニケーションを取りながら安全な環境をつくりあげていくという考え方で、利用者それぞれが道路は少し危険であるという意識を持ち、注意をしながら行動することも重視されています。

オランダドラハデン
(筑波大学山本早里准教授資料:オランダ ドラハテンのShared Space 車、自転車、歩行者が共存しています。)

□オランダのハンス・モンダーマン (Hans Monderman)という交通技術者が始めた取り組みで、オランダ、ドイツ、イギリスなどで実験的に行われてきました。EUのプロジェクトとして、2009年現在で5カ国・7自治体で実施されています。図らずも日本では大震災の停電のために、いわば強制的な形で、即席のシェアードスペースの実験が行われることになったのです。

▼迫られる発想の転換

□能率、効率を上げるために互いに競争し合う世の中になり、交差点でさえ、信号機しか見ないでさっさと渡る。他人を意識することさえしません。つまり目と目でアイコンタクトして譲り合いながら横断するという人間らしさを失ってしまったことに、今回の震災は気付かせてくれたのではないでしょうか。
□たかが交差点の渡り方ではないかと思う人もいると思います。しかし人間が生きていくための基本には他の人とコミュニケーションをとり、お互いに相手を思いやるという精神が必要です。信号等の装置に頼るのが当たり前だった人には、従来の常識を覆される状況ですが、シェアードスペースの考え方のような発想の転換が必要であると思いました。(了)

参考資料:紹介された2つの講演の内容詳細は、「公共の色彩を考える会」の第26回東京フォーラム記録集(¥1,000)で発売されています。ご興味のある方は、公共の色彩を考える会事務局 HPもご参照ください。
■公共の色彩を考える会事務局HP:http://www.sgcpp.jp/hp/books/list02.htm
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